しんごのキになる話59 ギリシャ神話 エコーの巻(その7)

かたやナルキッソスはエコー以外の妖精にも冷酷な対応をしておりました。 するとその妖精は復讐の女神ネメシスに恨みを晴らしてもらうように頼んだのです。 まるで必殺仕掛け神でございますね。 一説によりますと復讐を頼まれたのは妖精が仕えていた女神アルテミスだという話もございます。仕掛人が誰だか表に出てこないのはギリシャ神話も日本のドラマも同じでございますね。 それで復讐の神はナルキッソスが自分しか愛せない人間になるように罰を与えたのでございます。 そんなことも露知らぬ、ナルキッソスはある日、狩りにでて汗をかいたので水を飲もうと澄んだ泉に口をつけようとすると、はっとする美しい青年がその水面に映っているのを見たのでございます。 まるで太陽神アポロンのような美青年がそこにいるように見えたのでございます。 その青年にキスをしようと唇を近づけるとさっと消えてしまい、すこし見つめているとまた現われてくるのです。そして、ナルキッソスがその青年に微笑むと相手も微笑返し、手を伸ばすと相手も手を伸ばしてくるのです。 しかし、触ろうとした瞬間に相手は消えてしまうのです。 あのー、当時は同性愛というのは別に不自然な恋愛感情ではなく、友情の一種だと考えられていたのでございます。ゼウスもアポロンにも同性の恋人はいたのでございます。 その日からナルキッソスは毎日その泉に来て水面を眺め同じことを繰り返しました。 そうしているうちにナルキッソスはやつれ果てて最後の言葉を発しました。 ナルキッソス      むなしい恋の相手だった青年よ、さようなら。 するとエコーが『むかしい恋の相手だった青年よ、さようなら』と答えました。 ナルキッソクがやつれて体が消えて行ったその泉の側には一輪の花が咲いておりました。その花が英語のナルシサス(Narcissus)、水仙でございます。 自己愛をあらわすナルシズムはこのお話しから精神科学者のフロイトが広めてものでございます。 まあエコーと申しますと、年配の方には格安タバコの銘柄を思いだされるのではありませんか。 しんせいやゴールデンバットと並ぶ旧3級品とよばれました。しかし、20本入りで310円とほかのタバコが400円以上するのにエコーは安いため人気が出ているようでございます。 えっ、この落語の落ちはなんですかって? そりゃあ、妖精のエコーも、水仙のナルキッソスも最後はタバコのエコーのように煙になって消えたということでございます。 お後がよろしいようで。 ギリシャ神話 エコーの巻 おわり

しんごのキになる話58 ギリシャ神話 エコーの巻(その6)

それで、ヘラはとうとうゼウスがエコーを送り込んで来た理由を知ってしまい、ヘラはエコーに対して自分からはおしゃべりができないという罰をあたえてしまったのでございます。 そして自分から話しかけられなくなったエコーではございましたが、ある時恋をすることになったのでございます。エコーは美しいナルキッソスという青年に一目惚れをしてしまったのでございます。 ある時ナルキッソスは狩りをしているうちに仲間とはぐれてしましました。そして大声で叫びました。 ナルキッソス      誰かいるかい、近くに エコー              ここよ ナルキッソス      来てくれ エコー              行くわ すみません、日本語で話すと、意味がわかりませんので英語に直しますと ナルキッソス      Here エコー              Here ナルキッソス      Come エコー             Come なのでございます。我ながらなんと簡単な訳でございましょうか。 そしてナルキッソスの呼びかけに姿を現したエコーはナルキッソスに手を差し伸べました。 そして、二人は話しを始めたのですが、エコーは同じ言葉と繰り返すばかりで面白くなく、ナルキッソスは退屈になってエコーの手を振りほどいて去っていったのです。 ナルキッソス      もう君とは会いたくない エコー              もう君とは会いたくない エコーは言ってはいけない言葉を恋い焦がれた相手に発してしまい、驚き、落胆し、洞窟に隠れてしまったのでございます。 そうして、一人洞窟で思い悩み、身も心もやつれて、とうとう声だけの存在になり、自分を呼ぶものだけに返事をするようになっていったのでございます。 ギリシャ神話 エコーの巻(その7)につづく

しんごのキになる話57 ギリシャ神話 エコーの巻(その5)

その女神アルテミスに仕えていた妖精のひとりがエコーでございます。 このエコーにはおしゃべり好きという欠点がございました。 ゼウスは自分の浮気を監視する妻ヘラの追跡をのがれようとそのエコーをヘラの話相手につけたのでございます。 その時のゼウスとエコーの会話は次のとおりであったのでないかと思います。 エコー   私は一体、奥様と何を話せばよろしいのでございますか ゼウス  何でもよい、ヘラの側にいて相槌を打っておればよいのだよ エコー  その相槌とはどのようにすればよろしいのですか? ゼウス  『おはよう』といわれれば『おはよう』と答え、『良い天気だね』といわれたら『よい天気だね』と答えればよいのだよ てなわけで、ゼウスはエコーを妻ヘラのもとへ遣わしたのでございます。 ヘラ      おはよう エコー  おはよう ヘラ      良い天気だね エコー  良い天気だね へラ      お茶でも飲もう エコー  お茶でも飲もう すみません、ギリシャの神々がお茶を飲んでいたかどうかは定かではございません。 最初の内はまあなんとか話が合っておりましたが、やはり相槌だけでは間がもちません。 ヘラ      今、何時ですか エコー  今、何時ですか ヘラ      私が聴いているのよ エコー  私が聴いているのよ ヘラ      私が聴いているといっているの エコー  私が聴いているといっているの ヘラ      私が聴いているといっているのといっているの エコー  私が聴いているといっているとのといっているの ヘラ      馬鹿じゃないの エコー   馬鹿じゃないの そんな会話があったとかなかったとか。 ギリシャ神話 エコーの巻(その6)につづく

しんごのキになる話56 ギリシャ神話 エコーの巻(その4)

エコーといえばカラオケで使う反響音でございますが、自然の中では『やまびこ』や『こだま』でございます。このエコーもギリシャ神話がもとでございます。 エコーのお話しに入ります前に、やはり最高神ゼウスについてお話ししなければなりません。 ゼウスもエコーに関係してくるのでございます。 ゼウスは恋多き神でもあり、恋愛が仕事のようなものでございました。 ゼウスの妻ヘラは貞淑ではありますが嫉妬深く、自分の目を盗んではせっせと浮気に精を出している夫やその相手を厳しく追及したのでございます。 ゼウスは恋心が芽生えた相手にはあらゆるものに変身して近づきます。 それは牡牛であり、白鳥であり、そして空から降る黄金の雨にも変わることがありました。 そしていとこのレトを好きになった時に鶉(ウズラ)に変身して近づき目的を達成しました。 そのレトがゼウスの子を身ごもったことがわかると妻のヘラは出産の妨害を始めました。 ヘラと夫ゼウスとの間には軍神アレスのほかの出産の神エイレイテュア、青春の神へべがいましたが、その子供達はあまり活躍をしておらず、夫ゼウスが浮気して生ませた子ども達には英雄が多かったのでございます。それでヘラの嫉妬が激しかったのでございましょうね。 それでヘラはすべての土地に対してレトが出産する場所を与えてはならいと命じました。 出産を間近に控え困ったレトは妹を頼りました。それは妹というよりも浮島でございました。 というのは、レトの妹もかつてゼウスに言い寄られて困り、鶉に変身して海に逃げたのでございますが、怒ったゼウスによって岩、つまり浮島に変えられてしまったのでございます。ちなみにゼウスはその時には鷹に変身して追っかけたのでありました。 ヘラもレトの妹には同情はしておりましたのでレトが浮島で産むことを許したようでございます。 そこで難産の末に生まれた月の女神アルテミスと太陽神アポロンの双子でございます。 アポロンはギリシャ神話の中でも一番の貴公子ですから皆さんもよくご存じのことと存じます。 姉のアルミテスは処女神であり、弟のアポロンが生れた時に母のレトを助けたということで出産の神さまでもあります。 アポロンとは双子なのにギリシャ神話は一体どんな時間経過になっているのでしょうね。 ギリシャ神話 エコーの巻(その5)につづく

しんごのキになる話55 ギリシャ神話 エコーの巻(その3)

ギリシャの神話に話を戻しますと、身の周りには靴のナイキ、高級ブランドのエルメス、ホンダのオデッセイ、マヨネーズのキューピー、飲み物のネクター、野球ではジャイアンツ、最近の池井戸潤の小説『イカロスの翼』などなど日本中がギリシャ神話であふれているのでございます。 また最近は私なんぞも、いろんな商品をアマゾンで買うことがございます。 そのアマゾン社の社名の由来はAmazonのAがアルファベットの検索リストのトップに来て有利だとか、世界の最大の流域面積をもつアマゾン川のようにあらゆる商品を揃えているからといわれますが、アマゾンそのものはギリシャ神話に登場する女だけの部族であった国のでございます。黒海沿岸にあったそうでございます。 アマゾン社と言えば人工知能AIを利用したスピーカー『エコー』をまもなく日本でも発売いたします。 人口知能のスピーカーとはスピーカーに向かって声を掛けると天気を教えてくれたり、その日のスケジュールを答えたり、またほかの電子機器を自動で操作してくれると言うしろものものなのですよ。あれっ、シロモノ家電とは冷蔵庫や洗濯機とかじゃなかったのかな。失礼しました。はい。 でも、そのスピーカーは人工知能AIですから、名前は、『愛ちゃん』と名付けたらいいなと私は思いますがね。 ギリシャ神話 エコーの巻(その4)につづく

しんごのキになる話53 ギリシャ神話 エコーの巻(その1)

お囃子~♬ 高座に天竺亭シンゴ之助師匠が登場 え~、一席おつきあいをお願い申し上げます。 最近は日本に来られる外国人がどんどん増えてきているそうでございます。 少し前までは爆買いとか申しておりましたが、今ではモノからコトになり、買い物よりも日本の文化や歴史に興味を持って来ておられるらしいですね。 私が思いますに、そのうちに多く外国の方々が落語にも興味を持って寄席にもおいでになるとですね、寄席の方でもこりゃいかんということになり、国際会議なんかでイヤホーンをつけて同時通訳をするみたいに、寄席でもイヤホーンをつけて落語を聴くという姿が見られるんじゃないでしょうか。 あれ、そこで帽子をかぶっているおじさん、イヤホーンをつけていらっしゃいますが外国の方ですか?えっ、それは補聴器ですって。失礼しました。 えー、いまでも時々英語落語をする落語家がおりますが、そのうちに落語家になるには英検3級を持ってないと入門できないってことになるかもしれませんよ。イエース、ウィ、キャンでございます。 そしてケンブリッジ大やハーバード大を卒業した青い目の落語家がでてくるのではないでしょうか。 え、すでに青い目の女噺家がおられますわ。 ギリシャ神話 エコーの巻(その2)につづく

しんごのキになる話㊲ ギリシャ神話アポロンの巻(その7)

えっ、ボードを持っている方、なんですか? えっ、ボードの裏にダフネは沈丁花(じんちょうげ)の学名と書いてあるってですか。 ダフネですか、ちょっと先ほどから間が空いてしまいましたね。 すみません、そいじゃあ、ついでにそのボードを私(わたし)に渡(わたし)してください。 いやあ、これはしゃれではございませんよ。はい、ありがとうございます。 私は難しいことは忘れないようにしっかりとボードの裏に書いておいたのでございます。 え~、月桂樹の学名はLaurus nobilisと申します。英語ではローレルでございますね。 日本ではお酒の名前や自動車の名前につけられております。 また、生理用品のローリエは月桂と月経をシャレでつないだ花王の商品でございます。 花王と言えば洗濯石鹸しかなかった時代に、顔が洗える石鹸を販売し、その顔石鹸が花王石鹸となり会社名となっているのでございます。 一方、ダフネ(Daphne)は沈丁花(じんちょうげ)の学名となっております。 沈丁花という和名は香木の『沈香』のような良い匂いがあり、『丁子(チョウジ、クローブ)』のような花が咲くため、その両方の頭文字を取って名付けられたのでございます。 どうしてダフネが月桂樹でなく沈丁花の学名となったかは神のみぞ知るでございましょうか。 なお、出光興産の商品のマークは石油灯油がアポロ(ン)ですが潤滑油はダフネとなっております。 アポロンはギリシャとトロイとの戦争にも関係してきます。その中のエピソードを一つお話しさせていただきます。アポロンはトロイの美しい王女カッサンドラにも惚れました。そして誘惑したのです。 アポロン     あなたが欲しいものは何でも叶えてあげますので、私の愛を受け入れてください。 カッサンドラ   わかりました。それではあなたの持つ予言能力を私に下さい。 アポロン     お安いご用です。ちょっと待ってください。はい、目をつむって。はい、あげました。 カッサンドラは予言の能力を得ると、すぐさまアポロンの元を去っていこうとしました。 アポロン     おい、おい、どうしたんだ、願いを叶えたのに、どうして行ってしまうのだ。約束が違うではないか。 カッサンドラ   だって、あなたが私を弄んで、私を捨てて行ってしまうと予言できたからです、 アポロン     あっ、しまった、早まった。 後悔先に立たずであります。しかし、アポロンはカッサンドラの予言は誰も信じないと呪いました。トロイがギリシャと戦争を始めた時、カッサンドラはトロイが負けると予言し警告をだしたのですが、誰もそれを信用しなかったのです。それでトロイはギリシャに負けてしまいました。 美男子というものは悲しい結末が多いですね。良かったですね、みなさん、アポロンのようでなくて。 お後がよろしいようで。 ギリシャ神話アポロンの巻 終わり

しんごのキになる話㉟ ギリシャ神話アポロンの巻(その5)

アポロンには相手が植物になるお話しがまだあります。 あのヒヤシンスもアポロンが愛した美少年ヒャ、ヒュ、ヒョ、あ~あ、弟子が完全に夢の中でございます。すみません、隣のかた、何度もすみません。弟子の足もとに落ちておりますボードをこちらに向けていただけませんか。 はい、ありがとうございます。どうもすみません。なんか三平師匠の落語になってきましたね。 アポロンが愛した別の美青年はスパルタに住むヒュアキントスでございます。 このヒュアキントスには西風の神ゼピュロスも心を奪われていたのでございます。 ある時アポロンとヒュアキントスが仲良く円盤投げをして遊んでおりました。 アポロンが投げた円盤をヒュアキントスが取ろうとしたとき、嫉妬していた西風の神は口から風を吹き円盤の飛ぶ方向を狂わせてしまったのでございます。 すると円盤はヒュアキントスの頭に命中して死んでしまったのでございます。 ヒュアキントスの頭から流れ出た血が地面に染み込み、そこから生まれたのがヒアシンスの花でございます。アポロンは美青年の死を悼んで毎年ヒュアキントス祭りを催し、現在でもスパルタの恒例の祭りとなっているようでございます。 ギリシャ神話アポロンの巻(その6)につづく

しんごのキになる話㉞ ギリシャ神話アポロンの巻(その4)

ダフネはまだ男女の恋などを知らず、森の中を駆け巡るのが好きな乙女でございました。 そして河の神である父の命じる門限の時間もきちんと守る可愛い娘でございました。 さて、エロスの黄金の矢を胸に受けましたアポロンは森の中でダプネを見つけると、もう、一目ぼれ状態、胸キュンなのでございます。そして、その胸の内を伝えようとダプネに近づいていきました。 アポロン   ダプネよ、私のこの燃える愛を受け入れておくれ ダプネ    えっ、何なんの、急に、失礼な。私は男なんか嫌いなのよ、この不潔 アポロン   何を言うんだ、私はアポロンだよ。ゼウスの子だ。神々の貴公子だ ダプネ    止めて、聞きたくないわ、男はだれでもそんなこと言うのよ、さよなら アポロン   待ってくれ、お前がいくら走っても私にはかなわないのだよ ダプネ    ダメよ、いくら言い寄られても、あなたの気持ちは受け入れません アポロン   ほ~ら、追いついた、ダプネ、二人で一緒に愛を語ろう ダプネ    お父様、お父様、ヘルプ・ミー。私はいつまでも清い体でいたいのです。 たとえそれがどんなものであっても アポロンがダフネの体に触れようとするその時、河の神である父が娘の願いを叶えてくれたのです。 ダフネの体は指先から徐々に枝になり始め、とうとう全身が一本の木になってしまったのです。 アポロン  ダフネ、私はお前のことを一生忘れないよ。いつまでもそばにいてほしい そうだ、この木の枝で冠を作りいつも頭に載せておくことにするよ。 ということで、アポロンのスポーツの大祭では月桂冠が贈られることになったのです。 この話はなんか牧場の神パンに追いかけられた妖精が葦に変身した話に似ていますね。 また日本では筒井康隆の『佇むひと』という小説に政府を批判する人々が木に変えられていくブラックユーモアの物語がございます。きっとこの神話がもとになっているのではないでしょうか。 ギリシャ神話アポロンの巻(その5)につづく