詩~「星群」

星群   シンバル わわっと背を揺すられる その後ろで ヒューと 花火のように 高く昇っていく音 ペルセウス座流星群が見えるかもしれない 明かりは消してある ベランダの天井が仄白い そこに 柱の影が折れて二本 霞んでしか見えない街灯の光が 手すりの下に嵌まった網ガラスに 淡い茜に滲んでいる いつまでも何ほどか色を帯びて ぽおっと広がる大気 闇のない夜 ペルセウス座星群が近づいてくる ヒューと昇っていく 聞いたことのない物の音 同時に シンバル モダンジャズは鳴りやまない 背中に接触しているアルミサッシ 闇のない夜の空 あなた いま何をしているのですか 呟いて 空になったビール缶を弱く捩じ曲げる ペルセウス座星群は真上に 流麗な光が束のように 束のように光があるはず 荻悦子(おぎ・えつこ) 1948年、新宮市熊野川町生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。作品集に『時の娘』(七月堂/1983年)、『前夜祭』(林道舎/1986年)、『迷彩』(花神社/1990年)、『流体』(思潮社/1997年)、『影と水音』(思潮社/2012年)、横浜詩人会賞選考委員(2012年、16年)、現在、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会会員。三田文学会会員。神奈川県在住。

詩~鳥

 鳥   鳥が 身体を垂直に 尾を下にしたまま 枝から落ちるように すとんと下がり そのままの姿勢で 元の位置へ昇ろうとする 胸の位置に 両足をたたみ 羽根は ほとんど広げず 身体を震わせ 三十センチほどの 垂直の上昇 窓の外 私の目の前に 動いている鳥の 白く膨らんだ胸が 露にあった 折り曲げた足は 魚の胸の 一瞬に了解する 空の 海との近さ 水面をめがけて すいと昇る魚 水槽の透明な壁ごしに 目に親しい魚の上昇 だが 野鳥のうごめく胸 垂直の上昇を 真正面から見てしまった時 いけないことをしたように 私の心臓は波打った 鳥は 糸に手繰られ ぐぐっと昇るように見え 抗っているようにも見え 翔ぶというより 震えていた 荻悦子(おぎ・えつこ) 1948年、新宮市熊野川町生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。作品集に『時の娘』(七月堂/1983年)、『前夜祭』(林道舎/1986年)、『迷彩』(花神社/1990年)、『流体』(思潮社/1997年)、『影と水音』(思潮社/2012年)、横浜詩人会賞選考委員(2012年、16年)、現在、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会会員。三田文学会会員。神奈川県在住。