シンゴ旅日記インド編(102)ワテは運転手(組合)の巻
ワテは運転手でんねん、ご主人は日本人ですわ。 えっ、8月はインドがえらい世界のニュースになったんですか。 ロンドン・オリンピックの見知らぬ女性が選手団と行進、マルチ・スズキの暴動、ニューデリーの大停電、ルピーの暴落なんかですか? ワテがオリンピックでびっくりしたんは、選手の男の人がターバン巻いてたことですわ。あれな、ウソでっせ。ターバン巻くんわ、あれシーク教徒のもんでっせ。インド全体で2%もいませんのやで。 また、世界中に誤解を与えてしまいましたがな。 アカンなあ、インド人の何でもエエからみんなを喜ばせようとするサービス精神ちゅう技ですわ。 それに選手団と一緒に行進していた女の人誰か知ってまっか? 開会式のエキストラで踊るダンサーやったんやて、そんで、会場に入る許可証を持っておったって新聞に書いてあったんですわ。バンガロール出身の女の子でしたんやてな。全く悪気は無かったって帰国してからコメントしてましたで。 それにしてもなんでやろね、同じ位の人口を持つ中国が88個のメダルをとって、インドが6個、それも銀と銅だけちゅうのは、なんででっしゃろね。 それに、日本も可哀相でんな、ソフトボールや野球で日本が優勝してまうと、オリンピックの競技から外されてしまいますもんね。 インドでスポーツちゅうたら、クリケットが国技みたいなもんでんがな。 オリンピックにはクリケットがおませんがな、それがあったらインドは金を取れてたと思いますわ。 そやそや、社長さんが言ってはりましたけど、日本の『巨人の星』ちゅう野球のアニメがインドでクリケットに置き替えられて始まるそうですわ。 タイトルは「ライジング・スター」ちゅうて、日本とインドの共同制作らしいでっせ。 お父さんの厳しい指導を受けた男の子が、いろんな試練や葛藤を乗り越えながら、クリケット界の頂点を目指すという話やそうですわそんでね、舞台は建設ラッシュに沸くムンバイなんやて。 男の子の名前はスーラジちゅうて、そのお父さんのシャームは3輪タクシー「オートリキシャ」の運転手なんやて。ライバルになるビクラムは大手財閥系企業の御曹司なんやて。 野球少年が投げた魔球のようなもんまで出てくるちゅう話でっせ。 インドとおんなじようにクリケットの人気が高いコモン・ウェルスのパキスタン、バングラデシュ、スリランカなどの南アジアや、オーストラリアや南アフリカなどでの放映も見込んでるそうでっせ。 日本での新聞記事の話題ちゅうとマルチ・スズキの暴動でんがな。 日立製作所さんもエアコンの工場で火災に遭いましたが、マルチ・スズキさんの方が、損害やこれから来はる外国の企業さんたちへの影響が多きいんとちゃいまっか。 日本のスズキさんな、インドに来てからもう30年経ちますやろ。 マルチ・スズキの車ちゅうたら、もうインドの国民車ですがな。 最初のグルガオン工場、第二工場のマネサールもハリヤナ州にあるんですがな。 こんなことがあるんで、スズキさんは嫌気さして、グジャラート州に第三工場を作りはるやろうなあ。そやけど、グジャラード州も宗教的には大変なとこでっせ。 マルチ・スズキさんな、2009年に生産が追いつかんゆうて、第一工場とおんなじハリアナ州のマネサールに第二工場をつくったんですわ。これが原因でんな。 マルチ・スズキさんのマネサール工場な、去年は4回もストありましたんやで。この第二工場な、大体3000人くらいの人が働いていまんのや。 けど、正社員が60%、契約社員が40%でんのや。 インドって、ブリティシュの植民地やったから、結構、会社法とか労働法とかうるさいんですわ。 そやから、正社員やのうて、簡単に辞めさせることができる契約社員を使ってる会社が多いんでっせ。ワテがそうでしたがな。今年四月まで契約社員やっったんでっせ。 運転手は正社員と条件が違うゆうて、四年前に入社した時に言われてそのままでしたんや。 それを二年前に来はった今の社長さんが、正社員と契約社員と何が違うんや、明確せぇーって、経理に確認しはったんですわ。そしたら、経理が会社の保険に入れんとか、働く時間帯が違うとか言ってましたわ。 そしたら、社長さんが、働く時間を運転手だけ変えて、正社員にしてあげなさいって、言わはって、今年から正社員になれたんですわ。 そやけど、経理は、ワテが正社員になることに、なんであんまりエエ顔してないんやろな。 そやそや、マルチ・スズキの話やわ。 正社員って言うてもね、入社して三年間の実習生と、その後の正社員とがあるんですわ。 実習生と正社員では、お給料がかなり違うみたいでっせ。 そんで、契約社員の方もな、技能労働者とお掃除する係りがありますんや。 この契約社員はハリアナ州と話し合って、地元の人を採用せなアカンことになっとったんですわ。 第二工場やから、働く人の平均年齢が若いんのが特徴ですわ。25歳以下ですんや。 第一工場のグルガオンは、もう平均年齢はゆうに30歳を超えてるらしいでっせ。 そんでや、その第二工場のマネサールに第二組合を作れちゅう動きが出てきたんですわ。 裏では共産党系の組合が糸ひいてまんのや。あの毛沢東路線の反政府の政党AITUCですわ。 インドってね、ようけ、労働組合がありますんや。全国レベルでも次のようになってますわ。 BMS(インド労働連盟) :民族奉仕団(RSS) 832万人 INTUC(インド全国労働組合会議) :国民会議派 784万人 AITUC(全インド労働組合会議) :インド共産党 461万人 HMS(インド労働者連盟) :なし(社会主義系) 535万人 CITU(インド労働組合センター) :インド共産党(マルクス主義) 343万人 UTUC(統一労働組合会議(LS)) 160万人 TUCC(労働組合協同センター) 89万人 AICCTU(全インド労働組合中央評議会) 67万人 UTUC(統一労働組合会議) :革命社会党 78万人 出所:国際労働財団のホームページから 組合ちゅうても、組織率は5%程度のもんちゃいまっか。 そんで、そのマネサール工場の第二組合ですが、要求が無茶苦茶ですわ。 組合員のメンバーの三分の一まで外部のモンを入れよちゅうのですから。 暴動が起こった理由は第二組合問題だけやなくて、カーストや、賃金差別やいろんなモンがあったと思いますわ。 うちの社長さんな、日本のスズキが好きなんやて。 なぜかっちゅうとな、スズキのスズキ会長さんの生まれが、社長さんとおんなじギフで、社長さんの息子さんもスズキのスィフトに乗ってるからやって。 話変わりますけどね、横暴な組合ちゅうたら、この前のエア・インディアの操縦士のストですわ。 あれで、運賃が上がって出張費用が増えとるって社長さんが、こぼしてはりましたで。 今のエアー・インディア(AI)ってね、2007年にインディアン航空(CI)と合併してできたんですわ。このインディアン航空ちゅうのは、めちゃんこアカン飛行機会社やったらしいでんな。 当時のプログにこんなんがありますわ。 『インディアン航空の地上職員の名言。 私 「どうしてディレイしてるんだ?」 職員 「知らない」 私 「何で知らないんだ、無責任だろ!」 職員 「遅れた原因を知ったからといって飛行機が早く着くわけじゃないだろ」 私 「・・・・・」』 インドは1953年に8社あった民間航空会社が国有化されてもうて、国際線はエア・インディア、国内および国際線近距離はインディアン・航空となってましたんや。二社の独占でんがな。 けど、1990年代の民営化路線になってから、民間の航空会社がようけ出来てきたんですわ。 キングフィシャーさんは、一時は飛ぶ鳥の勢いでしたが、今は泡の雫ですがな。 これな、鳥のキングフィシャー(カワセミ)と親会社がビール会社ちゅうのを掛けた洒落でっせ。 そんでエア・インディアやがな。この2007年の合併後も操縦士さんの組合が別々なんですわ。 エア・インディアはIPG言うて、インデァン・パイロット・ギルドで、インディアン航空はICPAちゅうてインディアン・コマーシャル・パイロット連盟なんですわ。 これが仲が悪いのなんのって。今回のストはエア・インディアの操縦士さんの側ですわ。 お腹が痛いって、体調が悪いって、嘘を言って休んだんでっせ。 そんで、日本への便は全便欠航ですがな。 このストね、なんでしはったか、知ってはりまっか、会社が今度ボーイングのドリームライナーちゅうてB787の最新式の機体を買わはるんですわ。 旧エア・インディアさんはボーイング社の機体をずっーっと買ってきたんですが、インディアン航空さんはエアバス社の機体が中心やったんですわ。 飛行機の型式が変わったり、メーカーが違うと操縦士さんも訓練し直さなあきませんやろ。 そんで、エア・インディアの操縦士さんたちが、インディアン航空出身の操縦士が訓練を受けるのは、この会社がもうかっておらんこの時期に、コスト高になるよってに、せんでエエちゅうたんですわ。自分たちのお仕事を奪われんようにしたんですわ。 話代わりますけど、これってCAもおんなじでっせ。 ボーイング社の機体に乗るCAがエアブス、ちゃう、エアバスに乗るときや、その逆の場合も、それぞれ社内試験受けなアカンのでっせ。 このエア・インディアさんの操縦士さんのストね、これまた、伏線がありまんのや。 ちゅうのはね、エア・インデァさんは、正操縦士になるのに10年かかりまんのや、10年たてば自動的に正操縦士になれまんのやわ。怖い航空会社でんな。 インディアン航空さんは、それが6年ですねん。 それに、二つの組合があるんで、まだお給料なんかの待遇はエア・インディアの方がエア・インディアちゃう、エラい、エエンですわ。ちょっと舌噛みそうになりました、すんません。 そんで、去年な、インディアン航空の操縦士さんがお給料改善のストをやって、会社から増額を認められたんですわ。 それを根にもって、今度はエア・インディアの操縦士さんのストですわ。 そんなことやっててエアん、いやエエんですかいな。 […]